『嘘を愛する女』【感想・レビュー】

2018年1月21日日曜日

日本映画

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『嘘を愛する女』

(C)2018「嘘を愛する女」製作委員会

スタッフ

監督:中江和仁
脚本:中江和仁、近藤希実

キャスト

長澤まさみ:川原由加利
高橋一生:小出桔平
DAIGO:木村(キム)
川栄李奈:心葉

あらすじ

その姿は世の女性が憧れる理想像。食品メーカーに勤め、業界の第一線を走るキャリアウーマン・川原由加利は、研究医で面倒見の良い恋人・小出桔平と同棲5年目を迎えていた。ある日、由加利が自宅で桔平の遅い帰りを待っていると、突然警察官が訪ねてくる。
「一体、彼は誰ですか?」
くも膜下出血で倒れ意識を失ったところを発見された桔平。なんと、彼の所持していた運転免許証、医師免許証は、すべて偽造されたもので、職業はおろか名前すらも「嘘」という事実が判明したのだ。騙され続けていたことへのショックと、「彼が何者なのか」という疑問をぬぐえない由加利は、意を決して私立探偵・海原匠と助手のキムを頼ることに。調査中、桔平のことを“先生”と呼ぶ謎の女子大生・心葉が現れ、桔平と過ごした時間、そして自分の生活にさえ疑心暗鬼になる由加利-。やがて、桔平が書き留めていた700ページにも及び書きかけの小説が見つかる。そこには誰かの故郷を思わせるいくつかのヒントと、幸せな家族の姿が書かれていたのだった。海原の力を借りて、それが瀬戸内海のどこかであることを知った由加利は、桔平の秘密を追うことに……。
なぜ桔平は全てを偽り、由加利を騙さなければならなかったのか?そして、彼女はいまだ病院で眠り続ける「名もなき男」の正体に、辿り着くことができるのか-。(公式HPより)

高橋一生のキャラクターが活きる

近年、活躍が目覚ましい高橋一生だが、この作品での演技も期待どおりです。素性を隠す影を持ちつつ、その「時=今」の幸せを表現することに成功しているので、これがラストの泣きパートを引き出す効果を出していて、素晴らしい。共演の長澤まさみも、特に前半のキャリアウーマン然とした部分は、はまっている。
それだけに、作品が弱いのが残念である。

新人監督に期待すること

この作品の中江和仁監督は、商業作品の長編は初監督とのこと。この作品は、クリエイターを発掘するために開催されているTSTAYA CREATOR’S PROGRAMのグランプリ受賞作品で、募集要件は60分以上の作品である。中江監督は、普段、CM制作をされているそうである。これだけの条件だと、商業作品の長編は荷が重くないのか。そして、本作が60分程度で構成された脚本を、無理やり118分にしたようにみえるのだ。

真実はひとつだけ

某漫画のきめ台詞ではなく、後半、真実を追いかける過程が長い割に、明らかになったのは、主人公の幼少期の痕跡だけで、延々と瀬戸内ロケを見せられるだけの時間が長い。10分の1の時間でよかった。前半に東日本大震災の当日に出会ったくだりがあるので、伏線があるのかと思いきや、何もない。二人の想い出か書かれた小説から少しずつ本当のことが明らかになる展開にできなかったのか。せっかく高橋一生を起用しているのだから、明らかになる真実パートで、過去部分の彼の演技をもう少し差し込む脚本にした方が見ごたえがあるものになったのではと残念でならない。

実話を元にするいう必要があるのか

この作品は、実話を元にしていると謳われているが、謳う必要はないでしょう。これば、監督の意思とは無関係に制作会社や配給会社が書いた可能性があるが、リアリティを増す効果を狙っているというのなら、効果はほとんど出ていない。
※細部にこだわるのであれば、公式サイトの記載に誤字や不思議な表記があるのは勘弁していただきたい。
例えば、身分を隠していることで、持っていないものと偽造したものがおかしい。免許証と医師免許を偽造していると公式には書いてあるが、医師免許証は大きな賞状みたいまもので、現在発行されているのは、日本医師会の医師資格証なので、これのことだろうか。その場合、勤務先は記載していない。また、免許証が偽造する意味はなんなのか。口座開設のためなら、口座を持っていないという点で辻褄があわない。
ストーリーにリアリティを持たせるためのエッセンスということであれば、このあたりは細やかに配慮してほしい。監督の経験が浅いというのであれば、周辺のスタッフがカバーして上げてほしい。

作品全体として

全国配給するためには、110分程度の作品にする必要があったのは理解できるが、脚本の濃度が足りなかった。推敲が足りなかったのか、バックアップが足りなかったのか。良いキャスティングを押さえたのだから、もう少し、監督を支援してあげて欲しかった。

『嘘を愛する女』公式サイト
http://usoai.jp/

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