『犬猿』【感想・レビュー】

2018年2月10日土曜日

日本映画

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『犬猿』

(C) 2018『犬猿』製作委員会

スタッフ

監督・脚本:吉田恵輔

キャスト

窪田正孝:金山和成
新井浩文:金山卓司
江上敬子:幾野由利亜
筧美和子:幾野真子

あらすじ

金山和成は地方都市の印刷会社で働く営業マン。イケメンだが、真面目で堅実な彼は、父親が友人の連帯保証人になって作ってしまった借金をコツコツと返済しながら、老後のために毎月わずかな貯金をする地味な生活を送っていた。そんなある日、彼のアパートに、強盗の罪で服役していた兄の卓司が刑期を終えて転がり込んでくる。卓司は和成とは対照的に、金遣いが荒く、凶暴な性格でトラブルメーカー。娑婆に出てきて早々にキャバクラで暴れたり、弟の留守中に部屋にデリヘルを呼んだりとやりたい放題。和成はそんな卓司に頭を抱えるが、気性の激しい兄には文句のひとつも言えない。しかし、和成はそんな卓司のことを密かに天敵だと思っていた。一方で、そんな和成に仄かに恋心を抱いている女性がいた。和成が頻繁に仕事を依頼する、小さな印刷所を営む幾野由利亜である。親から引き継いだ会社を切り盛りする彼女は勤勉で頭の回転も速く、寝たきりの父親の介護もしながら仕事をテキパキとこなす“できる”女だが、太っていて見た目がよくない。その彼女にも実は天敵がいた。妹の真子だ。由利亜の下で印刷所の手伝いをしている彼女は、姉と違って仕事の要領が悪く、頭も決してよくないが、顔やスタイルの良さから、時々グラビア撮影やイメージビデオに出演するなど芸能活動もしていて、取引先の男性にも人気がある。由利亜は仕事もできないくせにチャラチャラして、チヤホヤされているそんな妹にいらつき、真子もまた節制できずにぶくぶくと太っている姉のことを小バカにしていた。しかしある時、金山兄弟、幾野姉妹に変化が訪れる。卓司が始めた胡散臭い輸入業の仕事が成功したことで和成の心に複雑な気持ちが芽生え出す。また、由利亜の仄かな恋心をよそに、和成と真子がつき合い出したことから、嫉妬に燃えた由利亜がストーカー化。一方の真子は、エロまがいのグラビアを一向に卒業できない焦りから枕営業へと走り、ラブホテルで卓司と鉢合わせしてしまったために事態は急変するのだが……。(公式HPより)

兄弟の劣等感

身近にいることで比較され、憧れ、苛立ち、離れたくても血で繋がる兄弟、姉妹が、徐々にむき出しの感情でぶつかり合う姿は、誰しも家族に対して抱いていた姿だろう。まるで、本当にいるかのように兄弟・姉妹にみる4人のキャストが素晴らしい。
中でも、本作では新井浩文の不器用な兄の演技が、十八番といわんばかりにはまっている。直情的で暴力的ではあっても、家族想いで正直なキャラクターを見事に演じているのはさすがです。

監督:吉田恵輔のリズム

本編中、兄弟、姉妹、恋人の掛け合いシーンが多いので、必然的にセリフの量が多いのだが、それぞれの関係性を現した形でのセリフ回し、活きている。卓司と由利亜の会話では、衝突の中に緩衝材のようなエピソードを入れることで空気感を緩めていて、絶妙の間を作り上げている。他にも、和成が同僚から言われるシーンなど、何気ないセリフも、空気感を変える演出になっていて、素晴らしい。

洒落たオープニング

オープニングの作りは、本作がテレビではなく、映画館で上映される作品であるということを意識した監督の茶目っ気のある部分がみえて、面白い。劇場で鑑賞する時は、油断せずに最初から注目して観ましょう。

作品全体として

誰しも共感できる感情を、ドラマティックに魅せる脚本・演出が光る作品。観たことがようなドラマかと思いきや、4人が織り出す兄弟・姉妹の感情が心に残る秀作。漫画や小説原作からではない、オリジナル脚本だからこその映画世界にハマり方が素晴らしい。おススメ作品ですね。、

『犬猿』公式サイト
http://kenen-movie.jp/

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