『ザ・スクエア 思いやりの聖域』【感想・レビュー】
(C)2017 Plattform Prodtion AB / Societe Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS
スタッフ
監督:リューベン・オストルンド
キャスト
クレス・バング:クリスティアン
エリザベス・モス:アン
ドミニク・ウェスト:ジュリアン
テリー・ノタリー:オレグ
第70回カンヌ国際映画祭 最高賞パルムドール
第90回アカデミー賞外国語映画賞 ノミネート
第75回ゴールデングローブ賞外国語映画賞 ノミネート
あらすじ
クリスティアンは現代美術館のキュレーター。洗練されたファッションに身を包み、バツイチだが2人の愛すべき娘を持ち、そのキャリアは順風満帆のように見えた。彼は次の展覧会で「ザ・スクエア」という地面に正方形を描いた作品を展示すると発表する。その中では「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という「思いやりの聖域」をテーマにした参加型アートで、現代社会に蔓延るエゴイズムや貧富の格差に一石を投じる狙いがあった。ある日、携帯と財布を盗まれてしまったクリスティアンは、GPS機能を使って犯人の住むマンションを突き止めると、全戸に脅迫めいたビラを配って犯人を炙り出そうとする。その甲斐あって、数日経つと無事に盗まれた物は手元に戻ってきた。彼は深く安堵する。一方、やり手のPR会社は、お披露目間近の「ザ・スクエア」について、画期的なプロモーションを持ちかける。それは、作品のコンセプトと真逆のメッセージを流し、わざと炎上させて、情報を拡散させるという手法だった。その目論見は見事に成功するが、世間の怒りはクリスティアンの予想をはるかに超え、皮肉な事に「ザ・スクエア」は彼の社会的地位を脅かす存在となっていく……。(公式HPより)
おもいやりと偽善の狭間
スウェーデンを舞台に、富を持つ側の視点からの「思いやり」と持たない側からの視点の「思いやり」への差を、全編にわたり、シニカルに描かれている。主人公は、「思いやりの聖域」という企画をたてながら、他方では、富を持つ側が自然と行っている、蔑んだ、または、偏見に基づく行動を、悪意なく、自然に行ってしまう。
コメディタッチではあるが
全編にわたり、コメディを交えて描かれてはいるが、それをそのまま笑うことができるのか。貧しい経験をしていなければ、嘘でも笑えない現実が見えてしまい、逆に富を持つ持つ側の偽善が滑稽に映る。
ハリウッドでも評価される
お洒落で社会派な本作は、第70回カンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを受賞しているのは納得なのだが、アカデミー賞でも外国語映画賞のノミネーションを受けている。これは、芸術性の高い作品や社会性のある作品を評価してきたカンヌ国際映画祭の審査傾向が変わったのか、それとも、アカデミー賞側が多くの批判を受ける中、アカデミー会員を増やしたことにより、多様な作品を評価できるようになったと理解できるのだろうか。
いずれにしても、どちらでも評価された本作品は、とても素晴らしい出来になっている。
作品全体として
主人公の行動から、いろんな矛盾や偏見に基づくトラブルに巻き込まれていくのだが、物語の到達点を追いかけると、作品の到達点を見失ってしまう。この作品を観ることで、マスコミや社会から押し付けられた「常識」から一歩引いて、考えてみる時間が取ることができるなら、観客にとって、良い影響を与えるといえよう。そんな知的でシニカルな作品。
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』公式サイト
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