『愛がなんだ』Just Only Love【感想・レビュー】
第31回 東京国際映画祭 コンペティション部門
スタッフ
監督:今泉力哉 Rikiya Imaizumiキャスト
岸井ゆきの Yukino Kishii:Teruko成田 凌 Ryo Narita:Mamoru
深川麻衣 Mai Fukagawa:Yoko-chan
若葉竜也 Ryuya Wakaba:Nakamura
あらすじ
「私はただ、ずっと彼のそばにはりついていたいのだ。」
28歳のテルコはマモルに一目惚れした5か月前から、生活すべてがマモルを中心に動いている。仕事中でも、真夜中でも、マモルからの電話が常に最優先。彼がそばにいてくれるだけで、テルコは幸せなのだ。しかし、マモルにとっては、テルコはただ都合のいい女でしかなかった。ある日、マモルの家に泊まったことから2人は急接近。ついに恋人に昇格できる!と有頂天になったテルコは、頼まれてもいない家事やお世話に勤しみ、その結果、マモルからの連絡が突然途絶えてしまう。それから3か月後、マモルから久々に呼び出されると、彼の隣には年上の女性、すみれさんがいた…。(第31回東京国際映画祭公式HPより)
10月28日(日曜)上映後Q&Aより(ネタバレ含みます)
今泉力哉監督(以下、監督)聞き手:矢田部吉彦プログラミング・ディレクター「コンペティション」担当
Q(矢田部):まずは、スクリーン7の大スクリーンで観客の方と一緒に観て、いかがでしたでしょうか。
A:周りのリアクションを感じながら観ることができて良かった。音響が良すぎて、お店の音が大きく聞こえてしまっていた。試写ではわからなかった、ちょっとしたリアクションがわかったことは収穫だった。
Q(矢田部):3つの片思いが登場するが、監督へする質問としては、変な質問になるが、片思いってなんでしょう。
A:ウッディアレンが、片思いは相手を知らないままなので、理想像が崩れないと言っていた。自分もそうだが、最近、誰かを好きになれない人が多いと聞くが、相手のことを好きになることができる、それが片思い。知る前だからこそ理想化されている。テルコは、マイナス部分を知っても、そのまま好きでいてしまうので、終わりがなくなってしまう。
Q(矢田部):どこまでも好きということは、残酷なことではないでしょうか。
A:途中のすみれのセリフ「テルちゃんみたいな人と付き合えばいいのに」がある。世のカップルは、お互いを受け入れた関係となっているのだから、マモルとテルコもお互いの悪い部分を知って好きになっていれば。
ナカハラとテルコは、対比のように出てくるが、ナカハラが先に気づき、ヨウコと仲たがいすること中で、テルコが孤独になるように心がけていた。
以下、観客からの質問
Q:マモルとテルコの関係がまったく理解できず、不思議な作品でした。ただ周辺の人物との関係性において、テルコの想いがよく伝わってきた。原作から変更した部分などあれば紹介して欲しい。
A:マモルがテルコの気持ちにどれくらい気づいているのか、を意識しつつ、周囲との関係性を描くことで、テルコの気持ちを表現していた。原作を読むと、好きになる対象がマモルである必然性がないのではないか、別のキャラクターでもテルコという人物は成立するのではないかと、読まれる読者もいるだろう。そのあたりが、マモルの曖昧さに繋がっているのではないか、実際、テルコとマモルの距離感は意識していた。原作では、マモルのもっとひどいシーンなどもあるが採用せず、旅行に行くメンバーに変更を加え、その中で会話するセリフを変えることで、この作品のような形にした。
Q:食べるシーンが多いが、監督が意識したことなどあれば。
A:「食べる」ことは「生きる」ことに繋がる。テルコは、自殺するような人物ではない。失恋して食事が喉を通らないという人もいるが、食べている姿がテルコらしいと考えていた。
Q:5人とも性格が異なるが、気がつくと自分の中にも彼らの一面があると気づいた。各キャラクターの描き分けをどのように考えたか。
A:よく群像劇を製作している。キャラクターを完全に作り切らず、現場の雰囲気や演技を観ながら作っていく部分もある。その結果、少し曖昧さが出ているのかもしれない。今回の演出においては、片思いを表現するために、自分が厚意を持っている人には、灰皿を取り替えたり、逆に興味のない人の言葉は耳が入っていない、といった部分を意識して行った。5人に共通していることは、不器用であること。そこが愛らしさでもある。
Q(矢田部):駐車場の中原のシーンが秀逸で、惹かれた観客も多かったのではないかと思うが。
A:細かい演出まではしていないが、若葉さんが劇中のセリフで「本当に好きなんだよね」というシーンで、涙を流さなかったことは感謝。涙を流してしまうと、一種の解決になってしまい、あのシーンが台無しになってしまうので。また、演出として唾を吐くシーンを入れた。これは、中原が「いい人」という終わりにならないよう、テルコに対してではない形で、そういう態度を入れた。
群像劇のセリフと演出
この作品では、今泉監督の群像劇への演出力が光っている。映画祭のQ&Aでも回答しているが、誰が誰を好きで、何を観て、何を聞いて、何を答えているのか。表面上に出る態度だけなら演出は容易だが、誰の声が聞こえているのか、見えているのか、となると途端に難しくなる。そのあたりを意識して作品を観ると、別の楽しみがあるだろう。片思いのそれぞれ
テルコ、マモル、ナカハラのそれぞれの片思いと愛への考え方が異なっているが、観客としては、誰に感情移入するか、それとも場面によって変わっていくのか。「それはない」とか「わかってほしい」とか映画を観ながら、感じる部分も多いだろう。そして、そんな気持ちにさせてくれる演出のリアリティが素晴らしい。駐車場のシーン
映画祭でも取り上げられているが、ラストの駐車場のシーンが秀逸。特に、ナカハラを演じる若葉さんの演技が素晴らしく、彼の演技がこの作品のクライマックスを作っているといっていいだろう。作品全体として
作品全体として、群像劇的に展開することもあり、捉えどころがなく、曖昧さがある作品で、ここがいいと説明しづらく、ただ、観終わったあとには、いい作品を観たという後味が残る、不思議な作品。ただ、この作品を国際映画祭の日本代表として選んだことは、素晴らしい。この作品のもつ普遍性は、世界に持って行っても、感じていただけるのではないかと考える。おススメ。『愛がなんだ』公式サイト
http://aigananda.com/
『愛がなんだ』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP09
『愛がなんだ』Just Only Love(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt9163346/?ref_=nm_flmg_dr_2
特集 第31回 東京国際映画祭 31st Tokyo International Film Festival
https://www.lifewithmovies.com/2018/10/tokyo-international-film-Festival.html
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