『詩人』The Poet【感想・レビュー】

2018年10月29日月曜日

映画祭 外国語映画 東京国際映画祭

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『詩人』The Poet【感想・レビュー】

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第31回 東京国際映画祭 コンペティション部門

スタッフ

監督:リウ・ハオ Liu Hao

キャスト

ソン・ジア Song Jia:Chen Hui
チュー・ヤーウェン Zhu Yawen:Li Wu
チョウ・リージン Zhou Lijing:Zhang Mu

あらすじ

中国の経済改革の最中、鉱山労働者のリーは紙とペンで自分の運命を変えようとする。妻のチェンは夫の夢を叶えようと全身全霊で支えた。ついに、彼の詩集が出版され、有名になり、鉱山の仕事を辞める。10年の歳月が経ち、急速な経済成長はあらゆる精神的信条の価値を下げ、詩人でいることなど論外だと考える世の中になった。チェンと離れたリーはもはや詩を書くことができなくなっていた。しかし、彼の知らないところで実はチェンは彼の生活を支えていた。リーの死後、チェンはリーの影と匂いに囲まれながら奇妙な人生を送る(第31回東京国際映画祭公式HPより)

10月29日(月曜)上映後Q&Aより(ネタバレ含みます)

リウ・ハオ監督(以下、監督)
ソン・ジア(以下、ソン)
聞き手:矢田部吉彦プログラミング・ディレクター「コンペティション」担当

Q(矢田部):80年から90年代初頭を時代背景として、作品を作るきっかけ、動機は?
A(監督):80年から90年代は、中国の現代史において重要な時期。計画経済から市場経済へ移行する過渡期で大きく変化した時代。その時期に、個人がどのような想いで生きていたのか、ということを描きたかった。私自身もその時代を生きた人間であり、また、その時代を記録するものだから。

Q(矢田部):ソン・ジアさんが参加された経過は?
A(ソン):昨年の今頃、撮影していた作品です。脚本を読んだ瞬間に素晴らしいとわかったし、そういう脚本で出会うと興奮するし、感動する。私が演じたチェンの夫役のチュー・ヤーウェンは、10数年前に共演してからの知り合いであり、いい演技が出来ると考えた。

以下、観客からの質問
:主人公が英雄へと変わっていく話と思うが、モデルはいるのか。また、ソン・ジアさんは役作りをどのようにして行ったか。
A(監督):リーという人物のモデルはない。当時にいた様々な人々を集めて作ったもの。
A(ソン):チェンは詩人ではないが、詩人だった。つまり、精神世界においては、詩人であったと捉えている。

:監督の実体験はどの程度入っているのか。ソン・ジアさんは、どのシーンに力を入れて演じたのか。
A(監督):この脚本は10年間に書いたもの。リーという人物は、私ではなく、集合体。脚本を書いた当時、上海で詩や脚本を書いていて、リーのような生活をしていた。
A(ソン):私が演じたシーンすべてに想い入れがあり、気に入っている。観客として観てたが、自分が出演していることを忘れるほど、作品に酔いしれてしまった。

:ラストシーンのリーに別の結末は検討しなかったか?
A(監督):(観客席を差し)プロデューサー、続編を撮影しましょうか(笑)

詩人は誰か

夫が詩人として描かれているが、実はその夫を献身的に支える妻が主人公であり、その強さ、美しさが際立っていく。その生き方こそが詩人なのか。途中、妻の登場しないシーンが続くにもかかわらず、その間も妻の存在を感じる構成が素晴らしい。

男性像の昔と今

詩人としての才能とそれ以上の自己顕示欲で生きている夫リー。ただ、妻に支えられているゆえに保っているアイデンティティが、時代を経る中で通用しなくなっていく様が憐れに描かれている。そして、憐れに映れば映る分だけ、ヒロインのチェンの存在が大きくなっていく。

作品全体として

アクションでも、歴史ものでもなく、ただその時代性みたいな部分に焦点を当てた作品で、中国映画界の多様性のひとつに感じる作品。ソン・ジアが抜群の演技を魅せているので、それだけを楽しみに観てもいいだろう。
また、まったく別の角度として、古い中国を描いているのに、今の中国映画界を感じてしまう不思議な感覚もえられる作品。主人公たちの描き方が、現代的なのだ。

『詩人』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP10

特集 第31回 東京国際映画祭 31st Tokyo International Film Festival
https://www.lifewithmovies.com/2018/10/tokyo-international-film-Festival.html

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