『迫り来る嵐』暴雪将至 The Looming Storm【感想・レビュー】

2019年1月6日日曜日

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『迫り来る嵐』暴雪将至 The Looming Storm【感想・レビュー】

(C)2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited

第30回東京国際映画祭 主演男優賞、芸術貢献賞

スタッフ

監督:ドン・ユエ

キャスト

ドアン・イーホン Duan Yihong:ユィ・グオウェイ
ジャン・イーイェン Jiang Yiyan:イェンズ
トゥ・ユアン Du Yuan:ジャン警部
チェン・ウェイ Zheng Wei:リゥ
チェン・チュウイー Zheng Chuyi:リー警官

あらすじ

1997年。中国の小さな町の古い国営製鋼所で保安部の警備員をしているユィ・グオウェイ(ドアン・イーホン)は、近所で起きている若い女性の連続殺人事件の捜査に、刑事気取りで首を突っ込み始める。警部から捜査情報を手にいれたユィは、自ら犯人を捕まえようと奔走し、死体が発見される度に事件に執着していく。 ある日、恋人のイェンズ(ジャン・イーイェン)が犠牲者に似ていることを知ったユィの行動によって、事態は思わぬ方向に進んでいく…。果たして、ユィに待ち受ける想像を絶する運命とはー(公式HPより)

中国の歴史に節目を背景に

2017年公開されたフォン・シャオガン監督「芳華 Youth」(アジア・フィルム・アワード 2018 作品賞受賞)では、1970 年代からの激動の時代を生きる若者を描いて、多くの映画賞で評価されるだけでなく、観客動員も大ヒットとなったが、この作品も、中国の転換期を背景にストーリーが描かれている。香港返還が行われた1997年から北京オリンピックが開催された2008年が時代背景に、時代に取り残された男を新鋭ドン・ユエ監督が描いている。

視点の先に観えるモノ

物語は、主人公ユィを中心に描かれているため、その視点を中心に描かれているが、前述のようにその背景に描かれている時代性が物語へ影響するため、俯瞰的に観ていかないと、監督のミスリードにはまっていくことになるだろう。主人公の観たいものは何だったのか、観たくなかったものは何だったのか。そして、真実は。ラストに近づくにつれて、観えてくる世界が、ユィの心と共に、私達の心へ突き刺さっていきます。

雨のシーンへのこだわり

本編の中では、多くの雨のシーンが描かれている。2008年に至る時代の変化の中で、時代の先を進んだものたちは、富裕層として社会の上層へ進んでいくことになるが、その先行きに乗ることができなかった人たちがこの物語の主人公たちであり、その未来への視界が通らないことを、「雨」を使って表現されているのだろう。

作品全体として

全世界トップの興行収入となった中国映画界において、近年、このような時代性を反映した作品が多く作られていることを、この作品を観ることで体感することができる。日本映画は取り残されている感が残念ではあるが、『万引き家族』だけでなく、日本の時代性を背景とした骨太の作品を生み出して欲しい。
近年の中国映画の方が、作品の幅が広く感じ、素晴らしい作品が多いので、今後も期待できそうだ。

『迫り来る嵐』公式サイト
http://semarikuru.com/

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