(C)2018 NORD-OUEST FILMS - STUDIO O - ARTE FRANCE CINEMA - MARS FILMS - WILD BUNCH - MAC GUFF LIGNE - ARTEMIS PRODUCTIONS - SENATOR FILM PRODUKTION
2018年アヌシー国際アニメーション映画祭オープニング作品
第44回セザール賞(仏アカデミー賞)最優秀アニメ作品賞受賞
スタッフ staff
監督・脚本:ミッシェル・オスロ Michel Ocelot出演 Cast
プリュネル・シャルル=アンブロ Prunelle Charles-Ambron:ディリリ Dililiエンゾ・ラツィト Enzo Ratsito:オレル Orel
ナタリー・デセイ Natalie Dessay:エマ・カルヴェ Emma Calve
あらすじ
ベル・エポックの時代のパリ。 ディリリは、どうしても外国に行ってみたくて、ニューカレドニアから密かに船に乗りパリにやってきた。開催中の博覧会に出演し、偶然出会った配達人のオレルとパリで初めてのバカンスを楽しむ約束をする。その頃、街の人々の話題は少女の誘拐事件で持ちきりだった。男性支配団と名乗る謎の集団が犯人だという。ディリリはオレルが紹介してくれる、パリの有名人たちに出会い、男性支配団について次々に質問していく。洗濯船でピカソに“悪魔の風車”に男性支配団のアジトがあると聞き、二人は向かうが、そこでオレルは狂犬病の犬に噛まれてしまう。 三輪車に乗ってモンマルトルの丘から猛スピードで坂を下り、パスツール研究所で治療を受け、事なきを得る。オペラ座では稀代のオペラ歌手エマ・カルヴェに紹介され、彼女の失礼な運転手ルブフに出会う。ある日、男性支配団がロワイヤル通りの宝石店を襲う計画を知った二人は、待ち伏せし強盗を阻止する。その顛末は新聞に顔写真入りで大きく報じられ、一躍有名になったディリリは男性支配団の標的となり、ルブフの裏切りによって誘拐されてしまう。ディリリはオレルたち仲間の力を借りて男性支配団から逃げることができるのか? 誘拐された少女たちの運命は?(公式HPより)
2019年6月22日(土曜) フランス映画祭 上映後Q&Aより(ネタバレ含みます)
ミッシェル・オスロ監督(以下、監督)聞き手:矢田部吉彦 東京国際映画祭プログラミング・ディレクター
Q(矢田部):この作品のアイデアは、いつごろ、どのようにして生み出されたのでしょうか。
A(監督):舞台をベル・エポックのパリに設定したのは、表層的な理由です。当時は、欧米で女性がロングドレスを着ていた最後の時代。私は、観客の方を魅了する作品を創りたいと考えていて、この美しい衣装であれば、皆さんに夢をみていただけるのはないか、と考えました。サラ・ベルナールがショートパンツを履いていたら、おかしいしょう?
以下、観客からの質問
Q:日本は、アニメーションが多く製作される国ですが、好きな作品や作家はおられますか。
A(監督):日本には面識のある監督が2人います。宮崎駿監督と高畑勲監督です。高畑監督がおられないのが、とても悲しいです。もし高畑監督がご存命であれば、この作品を日本語に訳してくれたでしょう。そういう意味では、ディリリは家なき子のようでもあります。
Q:主人公の2人は、作品中多くの実在の人物が登場する中で、オリジナルのキャラクタとして描かれていますが、モデルとなった方はいますか。
A(監督):この作品では、ディリリ、オレル、ルブフがオリジナルキャラクタです。ディリリとオレルは、少しずつ出来上がっていきました。作品のテーマとして、少女誘拐事件を考え、子供たちを守りたいという想いと共にキャラクタを描いた。そして、限られた時間の中で、パリの街をスピーディにみせるため、オレルの職業は配達員にしました。
Q:ディリリをニューカレドニア人という設定にした理由はなんでしょうか。作品テーマと関係するのでしょうか。
A(監督):ベル・エポックは、美しいロングドレスの時代であると同時に、男性至上主義で、また小さな子供を虐げた時代でした。そういう意味で、ベル・エポックという時代設定は完璧でした。ただ、当時のパリ人の多くは白人でした。前作でも、世界各地のさまざまなキャラクタを登場させ、多様性を描いたので、この作品の登場人物が白人ばかりだと広がりのない世界を描くことになります。この作品の中には、中国やアフリカの人など多くの地域の方が登場します。ただ、ディリリをニューカレドニアのカナックから来た少女にしたことは珍しいことではありません。当時、原住民村というものを作るのが流行していたから。そして、ディリリはニューカレドニアのカナック人とフランス人のハーフで、この要素がとても大切です。どちらからも迫害されがちであるということです。
Q:映画作品だけではなく、芸術作品を創る際に、難しかったことはありますか。芸術作品を創る仕事をしたいと考えていますが、アドバイスをいただけますか。
A(監督):アドバイスは、私みたいな人生を歩まないことだ(笑)長い間、作品を売り込むことができなかった。『キリクと魔女』の前後で、私には二つの時代があり、『キリクと魔女』以前は短編を細々と製作していた。『キリクと魔女』がヒットしたおかげで、銀行家を始め、私のことを好きになってくれた。ただ、彼らは移り気だけどね。作品を創る時は、さまざまなプロセスがあり、ステップがあるが、すべてに喜びがあり、自分はすべてをやろうとしてします。私は魔法使いのようなところがあり、すべてを手掛けてしまうのさ。
Q:作品にフェミニズムが投影されているようにみえますが、意図を教えてください。
A(監督):私は、生まれた時から、素晴らしい女性である母と姉と一緒に育った。よって、自分が男性だから優れているという考えを持ったことがありません。多くの人が成長するにつれて、女性蔑視の傾向があるように感じますが、とても愚かなことだと思います。時に、女性を虐待するような話が目に触れると、眠れなくなります。ただ、私はフェミニストという形容詞は似合わないように思います。私はヒューマニストだと思います。なぜなら、そういう事件の話を聞くと、人として怒りを覚えるので。数字だけでみれば、戦争より女性が迫害を受けて亡くなったケースの方が多いし、だから、こういうテーマの物語となっています。
Q:色彩の使い方がとても素晴らしかったです。パリの街の鮮やかさと貧民街の色彩を落とした感じの対比がよく伝わりました。会心のシーンはありますか。
A(監督):今回の作品は、現実のパリを紹介する役割を持たせています。背景の写真は、現代のパリを自分で撮影し、使用しています。夢の物語を伝えるだけでなく、現在のパリの姿を伝えることが出来たと思います。好きなシーンと聞かれてひとつ上げるとするならば、エッフェル塔に飛行船が下りてくるシーンが好きですよ。
Q(矢田部):写真の上に絵を落として表現されていますが、技術的な部分を少し紹介いただけますでしょうか。
A(監督):技巧的なところに目が行く人が多いが、自分が撮影した写真とアニメーションを融合しているだけですよ。2Dの写真の上に、人物たちのアニメーションを載せているだけです。ただ、写真の上にさらに写真を重ねる部分は少し手を入れているのと、下水道の部分は3Dでマトリックスしています。魔法使いなので、自分の手に入るものは、すべて使いますよ。
Q:著名人が多く登場し、画家のロートレックなどはセリフを持って描かれていますが、サラベルナールやマルセルなど登場人物の選択の基準と、お気に入りの登場人物は誰でしょうか。
A(監督):登場人物は、みんな好きですよ。原画を描く時は、とても楽しかったです。ロートレックには友情を感じるし、ルイーズ・ミッシェル、サラ・ベルナール、マリ・キュリーの3人のスーパーウーマンは好きで、一堂に会している姿に感動しました。ベルエポックは、女性が壁を乗り越えた時代であり、それは今も続いています。
奥行のある世界
ミッシェル・オスロ監督の映像の特徴として、平面に平面を重ねつつ、奥行きをみせる紙芝居のようなアニメーションがある。この作品もそうだが、一見、2D作品のような創りをしているのだが、映像を観ると奥行の広がりを体感できる。この不思議な感覚はなんだろう、と思ってしまう。多様性のある世界
Q&Aでも答えられているが、主人公はニューカレドニアのカナック人とフランス人のハーフの少女で、他にも白人以外の多くの方が登場する。これは、ベルエポックの時代を描きつつ、現代の多くの移民が暮らすフランスのパリを描いていることを意味している。作品全体として
世界観が確立されていて、もはや「ミッシェル・オスロ」というジャンル映画のような作品。『キリクと魔女』や『夜のとばりの物語』など、ミッシェル作品に惚れたファンはもちろん、アニメーション大国である日本でも、新しいアニメーション体験をさせてくれる素敵な作品。おすすめ。『ディリリとパリの時間旅行』公式サイト
https://child-film.com/dilili/
『ディリリとパリの時間旅行』Dilili a Paris IMDB
https://www.imdb.com/title/tt7169514/
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