『ゴーストタウン・アンソロジー』Ghost Town Anthology【感想・レビュー】ネタバレあり

2019年10月29日火曜日

review 映画祭 東京国際映画祭

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第69回 ベルリン国際映画祭 コンペティション作品
第32回 東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門

スタッフ staff

監督:ドゥニ・コテ Denis Cote

出演 Cast

ロバート・ネイラー Robert Naylor:ジミー・デュベ
ジョゼ・デシェンズ Josee Deschenes:ジゼル・デュベ
ジャン=ミッシェル・アンクティル Jean-Michel Anctil:ロミュアルド・デュベ

あらすじ

人口215人の過疎の町。青年が自動車事故で亡くなる。住人たちは嘆き悲しみ、事故の原因はなおざりになる。喪に服す町に霧が立ち込め、やがて見知らぬ人々が現れる。彼らは何者なのか?(第32回東京国際映画祭公式プログラムより抜粋)

現代のカナダのローカルコミュニティを描く

青年が事故で亡くなったことを悲しむにもかかわらず、その原因追及はなおざりになる。つまり、この村は「村人が減っていくこと」が当たり前になったローカルコミュニティの人々を描いている。日本では、過疎高齢化のイメージが強いが、この作品では鉱山という産業が無くなった街から、どんどん人がいなくなり、コミュニティが崩壊寸前の村として描かれている。ただ、ゆるやかに進行する村の崩壊について、村人たちの打開策はなく、ただ不安感だけが渦巻いている。

記号的なキャラクター

現代ローカルコミュニティの象徴的なキャラクターが登場する作品。終の棲家として、自分のアイデンティティの変化を拒絶し、排他的な象徴として登場する「村長」、都市からの移住者で恋人も出来ず、村へ溶け込むことができない女性、村から都市へ出ることを拒絶する若者など。

現れる人々とタイトル

この作品は「ゴーストタウン」とタイトルにつけられているが、この村は、ゆるやかにゴーストタウンになっていく村が描かれている。さらに現れる人々は、村人へ何も干渉しない。存在しているというより、存在していたと表現した方が正しい。過去の存在は、村を助けることはしないが、村の「残照」として存在し、村人たちをローカルコミュニティに縛りつけていて、振り払うことができない。これは、現代日本のローカルでも共通点がある話で、先祖の土地だからという「残照」のような理由で、土着的に生きているローカルな人々は多い。

作品全体として

ホラー的なタッチで描いているが、実は過疎化が進むローカルの漠然とした不安感と恐怖を描いた社会派の作品。ただ、このローカルの空気感みたいなものを、都市部で生まれた人々が理解できるのか、という懸念が少し残る。一方で、現在の日本は、まだ大っぴらに「村のコミュニティを捨てる」ということが、過疎高齢化の先にあるという風には言われづらい段階であるが、ドゥニ・コテ監督は映画作品として、人口減少社会の普遍的な姿として描いている。これは「映画監督は少し未来の社会を見据えて創る」ということ証明しているような作品でもある。

『ゴーストタウン・アンソロジー』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32WFC03

『ゴーストタウン・アンソロジー』Ghost Town Anthology(IMDB
https://www.imdb.com/title/tt9068100/

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