『ファストフード店の住人たち』i'm livin' it 麥路人【感想・レビュー】ネタバレあり

2019年10月31日木曜日

review 映画祭 東京国際映画祭

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第32回 東京国際映画祭 アジアの未来部門

スタッフ staff

監督:ウォン・シンファン Wong Hing Fan

出演 Cast

アーロン・クォック Aaron Kwok:ポック
ミリアム・ヨン Miriam Yeung:ジェーン
アレックス・マン Alex Man:待つおじさん
チャー・リウ Cya Liu:イン

あらすじ

24時間営業のファーストフード店には、金融業界の寵児から転落したポックや落ちぶれた歌手のジェーンをはじめ、借金で首の回らない者、家に帰れない事情のある者、逃亡中の者など、訳ありの人々が「住人」となって過ごしている。そうした最低の状況のなか、次々と事件が起こる。(第32回東京国際映画祭公式プログラムより抜粋)


10月29日(火曜)上映後Q&Aより

ウォン・シンファン監督(以下、監督)
アーロン・クォック(以下、アーロン)
ミリアム・ヨン(以下、ミリアム)
聞き手:石坂健治プログラミング・ディレクター「アジアの未来」部門担当

挨拶(アーロン):私は、多くの作品に参加し、その度にいろいろな役に挑戦してきました。この作品に関しては、2年前にカンヌで脚本をみせていただき、その時に、どんな条件であれ、どんな金額であれ、この映画をやりたいと自分から進んで伝えました。自分としては、香港の俳優として、香港の映画を応援したいという気持ちがあります。今回、こうやって皆さんに観ていただいたことで、皆さんにも香港の映画を応援していただきたいし、この作品を気に入ってくれると嬉しい。

挨拶(ミリオン):今回、この作品に参加できたことを、意義のある作品に参加できたことを、光栄に思っています。この作品は、ラストシーンを観ると、皆さんから観ると重苦しく感じたかもしれませんが、この映画は、娯楽映画という要素だけではなく、人と人との繋がりを伝えられる、素晴らしい作品です。こういう作品に参加できたことを喜んでいます。

Q(石坂):主演のお二人、共演してみて感想は?
A(アーロン):ミリアムさんは、頭のいい女優さんです。実は、この映画の撮影中、ミリアムさんは他のドラマで、まったく違う役柄を演じていて、一方で、この作品では、この難しい役を演じておられました。
これは、チームだから実現できた出来たという側面もあります。
監督は、初監督とはいえ、非常に才能のある監督で、ひとつひとつ、簡単に取れるシーンであろうと複雑なシーンであろうと、的確にシーンを演出してくれました。
ミリアムさんは、いくら頭が良いとはいえ、2つのまったく違う役柄を同時期に撮影するというのは、切り替えが難しい。ミリアムさんが見事にやってのけられたのは、また、こういう素晴らしい作品に仕上がったのは、チームワークのおかげだと考えています。

A(ミリアム):まず、今回、この作品に参加出来て、非常に嬉しいかったです。また、こんな素晴らしい監督の元で、また、アーロンさんが信用してくれたこと嬉しかったです。さらに感謝したいのは、アーロンさんのマネイジメントをしているシュウメイさんからオファーをいただき、自分がこういう難しい役にチャレンジすることができましたことも嬉しかったです。
(演技が)難しいというのは、先ほどもありましたが、別のドラマ作品の撮影も並行して行っていました。そちらでは、非常に幸せな妻の役を演じていました。弟もいて、家族もあり、本当に幸せな役柄でした。一方で、こちらの現場に来ると、非常に孤独で寂しい役柄でした。自分としては、これは挑戦でもあり、自分の殻を破れる素晴らしいチャンスだったと思います。
やはり、人は、すべてが幸せに思えることが大切で、この映画の中でも、そのように感じました。また、アーロンさんやファン監督に出会えたことは、幸運でした。

Q(石坂):デビュー作で、大スターの共演作を任されて、また、アレックスマンさんやノラ・ミャオさんの出演など、香港映画に対するリスペクトを非常に感じましたが、どのような想いで、この作品を撮影されたのでしょうか。
A(監督):まず、お二人はスーパースターですし、他の方々もスターの方々でした。ただ、自分にとっては、私が監督を務める映画の現場に来られた時は、彼らは俳優であり、スーパースターではありません。スーパースターとしてではなく、俳優として参加してくれて、自分の演出に添って、素晴らしい演技をしてくれる俳優であるという気持ちで撮影していました。

以下、観客からの質問
:香港らしい香港の映画でした。私も涙していましたが、アーロンさんも客席で涙されていて、一緒に泣けて、感動しました。香港映画と某ハンバーガーショップチェーンとは、昔からのいきさつがあり、憶えている範囲では、ウォン・カーワイ監督が『天使の涙』を撮影した時に、無許可で撮影したので、チェーン側に不興を買ってしまい、ピーター・チャン監督が『ラブソング』を撮影する時に、ロケ地としてお店を借りられなかったと記憶しています。その時から時間が経過していますが、このチェーン店で撮影することに、協力が得られたのでしょうか。
A(監督):ファーストフード店は、ロケ地としただけで、作品としては、人を描くことがテーマだったので、ロケ地に拘りませんでした。

.この作品のタイトル『I'm livin' it』が気に入りました。キャストのお2人は、普段、いわゆるファーストフード店で過ごされることはあるのでしょうか。

A(アーロン):脚本を読んだ時に、まず、ネットを使って、実際に24時間営業のファーストフード店で、いわゆるホームレスの方がいるという事実を調べました。ネットには、偶然ですが、彼らの取材記事があり、彼らがどういう生活をし、何を考えているのか、将来どうするつもりなのか、書かれていました。そういう記事等も含めて、自分がこの役を演じるにあたり、多くの情報を役作りに役立てようとしました。ネットで調べた時には、日本にも、ホームレスの方がいて、いわゆるネットカフェ難民の方がおられるという記事も読みました。ただ、この作品の中でのファーストフード店はロケーションであって、この作品が描きたいのは、人の愛、人と人との愛を伝えたいということですね。

A(ミリアム):私にとって、ファーストフード店というのは、子どもの頃の思い出です。子どもの頃、ファーストフード店へ行った、楽しい思い出があります。ハンバーガーやフライドポテトを食べることが、楽しみでした。今も自分の子どもを連れて、ファーストフード店へ行きますが、それは子どもの楽しみを探してあげるためです。この作品の中で感じたこと、出演して感じたことは、そのファーストフード店の中で生活をしている人たちがいるということ。いわゆるファーストフード難民の方。いろんな人生があり、いろんな人がいると思います。また、苦しいこと、辛いこと、困難なことがたくさんあると思います。そして、それを家族に言えない状態、というのが難民の方たちであると思います。私は、この作品を通じて、皆さんに知っていただきたいと考えるのは、家族ともっとコミュニケーションを取り、もっと家族と仲良くすること、それがとても大切なことであるということをわかって欲しい。家族は一番信頼できる、愛し合える存在であると思うのです。だから、家族と愛を共有することが大切だと思います。

(監督から最後に)
今回の作品のタイトル『I'm livin' it』。これは、2つの意味があります。ひとつは、ここに住んでいるということ。もうひとつは、ここで生きているということ。この2つの意味を込めて、タイトルをつけました。

若手監督による社会派作品の潮流

ここ数年、『誰がための日々』のウォン・ジョン監督、『G殺』のリー・チョクバン監督など、若手監督が香港の現代社会の問題を投影した作品を精力的に制作し、また、香港映画界も支援している流れが出来ている。この作品の主演を務めたアーロン・クォックのコメントも、そういう香港映画界の姿勢を反映したもので、とても素敵です。日本映画界でも、新人監督による作品へもう少し支援できるような仕組みや、映画界としての空気みたいなもの生み出すことができないだろうか。

人の繋がり

アーロン演じる主人公:ポックは、元金融業界の寵児だが、上流階級への返り咲きを目指しているわけではく、ファーストフード店に集まる人々を助ける存在として生きている。彼が何を失い、何を得ようとしているのか、作中でポックがジェーンに語る印象的なセリフが彼の心の在り様を表している。

『ファストフード店の住人たち』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32ASF08

『ファストフード店の住人たち』i'm livin' it 麥路人(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt10117402/

第32回 東京国際映画祭 特集ページ
https://www.lifewithmovies.com/2019/10/tokyo-international-film-Festival.html

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