(C)Morena Films - Senor y Senora - Logical Pictures - Ventajas de Viajar en tren A.I.E
第32回 東京国際映画祭 コンペティション部門
スタッフ staff
監督:アリツ・モレノ Aritz Moreno出演 Cast
ルイス・トサール Luis Tosar:Martin Urales de Ubeda
ピラール・カストロ Pilar Castro:Helga Pato
エルネスト・ アルテリオ Ernesto Alterio:Angel Sanagustin
ピラール・カストロ Pilar Castro:Helga Pato
エルネスト・ アルテリオ Ernesto Alterio:Angel Sanagustin
あらすじ
私の人生を知りたい?若い編集者のエルガ・パトは鉄道旅行の間、その返答に窮する質問と格闘することになった。彼女の隣に座った男、アンヘル・サナグスティンは人格障害専門の精神科医。道中、アンヘルは彼が知るなかでも最も重症の患者のおぞましくクレイジーな話をし始めた。それは、ゴミを制御装置だと思い込む、極めて危険な偏執症の男、マルティン・ウラレス・デ・ウベダの話だった。この偶然の出会いによって、エルガとその他の登場人物たちは、予期せぬ展開に巻き込まれ、彼らの行く末は驚きの変化を遂げることとなる。(第32回東京国際映画祭公式プログラムより)
11月2日(土曜)上映後Q&Aより
アリツ・モレノ監督(以下、監督)
アントニオ・オレフド(原作者)
ティム・ベルダ共同プロデューサー
聞き手:矢田部吉彦プログラミング・ディレクター「コンペティション」担当
Q(矢田部):この原作にいつ出会い、第1作目の映画原作として、選ばれたのは、なぜでしょうか。
A(監督):5年前に、私と一緒に仕事をしているプロダクションカンパニーの女性が原作を読み、(彼女に)この本を読まなきゃだめよと言われました。映画化は難しいけれど、小説として素晴らしいので、読んでねと勧められました。私が初めて読んだ時に、映画化された映像が見える気がしました。とてもスペシャルで、ダークなユーモアに溢れた映画として。映画化は難しいけれど、とてもスペシャルなものができると考えました。この小説の中には、いくつも映画が出来る要素が詰まっています。そして、もしこの作品を映画化出れば、この1作だけになってもいいと考えました。
Q(矢田部):自分の小説が映画化される日が来ると思っていたのでしょうか。また、映画化された作品を観た感想はいかがでしょうか?
A(アントニオ・オレフド):映画化されると想像していませんでした。このクレイジーな小説を映画化したいという人が現れると思っていませんでした。作品を書く時には、イメージで言葉を創造しているわけではなく、言葉で考え、文章的な構造は考えます。キャラクターの顔や舞台となる場所、雰囲気は、イメージではなく「言葉」そのもので考えています。ですが、完成したこの作品を観た時に、まるで自分が小説を書くときに、このキャラクターや場所、雰囲気を考えていたかのような気持ちになりました。とても奇妙なのですが、原作者としては、最高のことだと思います。
以下、観客からの質問
Q:難解で場面の切り返しが多い作品において、ナレーションやフラッシュバックを多用することは、観客を置き去りにしないためには有効だと考えますが、どこまでを説明し、どこまでを想像に任せるのか、注意した点をお聞かせください。
A(監督):フラッシュバックを多用する(作品の)構造・バランスを取ることは、とても難しいです。元々の小説がそのような構造になっているので、出来るだけ添うようにしました。映画的に、このような構造はうまく機能すると考えていました。また、実際のキャラクターの顔や場所が見えることで、多層的な構造が視覚化することになるので、映画にした時の方が、うまくいくと考えました。また、そういう構造が視覚的に魅力的だと感じました。バランスを取るのは、とても難しいですが、本能的に決めました。この作品はフィクションであり、また、映画であるとわかっていて、それを常に思い出させる、自意識を持った、自意識の強い作品と言えるでしょう。映画の冒頭にも、「こういう人がいたと想像してください」というナレーションで始まっているので、観客の方とのプレイを楽しむ作品だと考えています。
Q:音楽の構成について、教えて下さい。
A(監督):英のTVシリーズ「ユートピア」の音楽を担当していた作曲家が独特の音楽を作っていて、3年間メールを送り続けて、ようやく受けていただいた。台本を読んだだけで、1か月で40曲も作ってくれたが、映像を観た時に、その40曲をすべて破棄して、さらに一から作り直してくれた。
彼は、日本に行ったことはありませんが、日本の音楽が大好きで、レコードをたくさん持っていました。私も彼も、夢はsamurai movieを作ることです。
Q:現代社会は、いくらでも嘘を作り出せる社会となっている。作品では汚物とわからず食べていたりします。ラストで映画、虚構を真実とみる必要があるのか。
A(アントニオ・オレフド):原作を書いた20年前に何を考えていたか、憶えていません。何かを読む時、リアリティとフィクションが区別がつかないことがあります。世の中のあらゆる問題の原因について、リアリティと非リアリティをわけることは難しい。以前はリアリティと虚構と区別がつかなかった。
最高の狂気の物語
映画祭のQ&Aで、観客から「どこか筒井康隆を想起させる」との感想が出ていたが、編集部も同じ意見だった。精神病患者の話から始まる物語が、虚構なのか、現実なのかわからない世界を行き来し、自分自身の精神がどうかなってしまったかのような錯覚を覚える展開に引き込まれる。複雑に絡む物語
物語としては、ピラール・カストロ演じる女性がスタート地点として始まるのだが、精神科医の話す精神病患者の話からその妄想へ繋がり、虚構から虚構へ繋がっていくうちに、どのレイヤ―が物語的に現実なのか、わからなくなる。観客の共感の立ち位置として、正常な人物に置いていたはずなのに、いつか狂気の人物へ共感している自分に気づき、不思議な感覚に囚われる。作品全体として
作品の中には、目を背けたくなるようなモラルとして問題のある表現も登場するため、多くの観客の共感を得られるかどうか、わからないが、この映画を「好み」だと感じた方は、一生忘れられない作品となるかもしれない。そんな独特の感性がスクリーンから伝わってくる特異な作品。編集部は、この作品が好きです。『列車旅行のすすめ』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32CMP01
『列車旅行のすすめ』Advantages of Travelling by Train(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt8406738/
第32回 東京国際映画祭 特集ページ
https://www.lifewithmovies.com/2019/10/tokyo-international-film-Festival.html
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