『私のちいさなお葬式』Karp otmorozhennyy【感想・レビュー】

2019年12月28日土曜日

review

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(C)OOO≪KinoKlaster≫,2017r.

スタッフ staff

監督:ウラジーミル・コット Vladimir Kott
脚本:ドミトリー・ランチヒン Dmitriy Lanchikhin

出演 Cast

マリーナ・ネヨーロワ Marina Neyolova:エレーナ Elena Mikhaylovna
アリーサ・フレインドリフ Alisa Freyndlikh:リュドミラ Lyudmila
エヴゲーニー・ミローノフ Evgeniy Mironov:オレク Oleg

あらすじ

村にひとつしかない学校で教職をまっとうし、定年後は慎ましい年金暮らしを送っている73歳のエレーナ(マリーナ・ネヨーロワ)が、病院で突然の余命宣告を受けた。5年に1度しか顔を見せないひとり息子オレク(エヴゲーニー・ミローノフ)を心から愛しているエレーナは、都会で仕事に大忙しの彼に迷惑をかけまいとひとりぼっちでお葬式の準備を開始する。まずは埋葬許可証を得ようとバスで戸籍登録所を訪れるが、中年の女性職員に「死亡診断書がなければ駄目です」と素っ気なく告げられ、元教え子のセルゲイが勤める遺体安置所へ。「息子は忙しすぎて、葬儀だのお通夜だの手配できないわ。私はただ、いいお葬式にしたいだけなの」そう事情を説明してセルゲイにこっそり死亡診断書を交付してもらったエレーナは、戸籍登録所での手続きを済ませたのち、葬儀屋で真っ赤な棺を購入する。
 翌日、ふたりの墓掘り人を引き連れて森の墓地に出向いたエレーナは、そこに眠る夫の隣に自らの埋葬場所を確保する。隣人のリューダに秘密のお葬式計画を知られたのは誤算だったが、すぐさまエレーナの心情を察したリューダは、ふたりの友人とともにお通夜で振る舞う料理の準備まで手伝ってくれた。リューダらが去った後、生前の夫との思い出の曲をかけながら死化粧を施す。
 かくしてすべての段取りを整え終えたエレーナの“完璧なお葬式計画”は想定外の事態へと転がり出すのだった……。(公式HPより)

家族を描いた物語

家族の形をテーマにした作品は、毎年のように生み出され、例えば、昨年、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和監督『万引き家族』は、疑似家族を描きつつ、本当の家族とは何か、を考えさせられた。この作品では、単身の母親が主人公で、息子が5年に1度しか帰ってこない親子を描いているが、単純にそれを批判するものではない。親の望む子供の幸せ、親の理想を意識しつつ人生を選択した息子。二人の心の在り様を優しく描いている。

現代家族の普遍性

この作品は、2017年ロシアで公開された作品ですが、描かれているテーマは日本でも共通する近代社会の姿である。自分の子供の幸せを願い、都市部の大学への進学、就職を願う親。その結果、地方には、高齢化した親世代が残り、都市部に人口が集中する近代社会。これは、首都圏に人口が集中する日本にもあてはまる姿で、日本にいる私たちの心にも、同様に響くものだ。

悲壮感だけではない

自らのお葬式を息子に迷惑をかけないようしようとする主人公エレーナの姿は、決して、悲壮感漂うだけのものではない。自分の死後を準備しながら、最後まで、自分の人生を軽やかに生きている。エリーナを演じるマリーナ・ネヨーロワは、モスクワ国際映画祭キャリア貢献賞受賞したロシアの名優ですが、その演技はさすが。とても可愛らしく、軽快で、人の心を惹きつける。

作品全体として

近年、家族を描いた作品は、その画面から伝わる空気は重く、陰鬱な後味を残すものが多い中、この作品は最後まで軽やかで、それでいて、心に暖かい感動を残してくれる。現実から目を背けるわけではなく、それを受け入れた生き方を素敵に描けるのも映画の素晴らしさだろう。そんな気持ちにさせてくれる秀作。おススメ作品。

『私のちいさなお葬式』公式サイト
http://osoushiki.espace-sarou.com/

『私のちいさなお葬式』Karp otmorozhennyy IMDB
https://www.imdb.com/title/tt7085164/

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