第15回 大阪アジアン映画祭 コンペティション部門
第39回 香港電影金像獎 作品、監督、脚本、主演女優、新人ほか最多8部門受賞
スタッフ staff
監督:デレク・ツァン(曾國祥)Derek Tsang出演 Cast
チョウ・ドンユィ(周冬雨)Dongyu Zhouイー・ヤンチェンシー(易ヤン千璽)Jackson Yee
あらすじ
内向的な優等生ニエン(チョウ・ドンユィ)は、同級生たちから凄惨ないじめを受けている。ある夜、不良少年の喧嘩に巻き込まれたことからシャオベイ(イー・ヤンチェンシー)と知り合う。優等生と不良少年という対極的な二人が、複雑な家庭環境で寂しい思いを抱えたまま孤独に生きるお互いを知るにつれて心寄り添っていく。(第15回 大阪アジアン映画祭公式HPより抜粋)
チョウ・ドンユィ(周冬雨)の演技が、円熟さを感じさせる域へ
チャン・イーモウ監督『サンザシの樹の下で』でデビューし、中国では「13億人の妹」と呼ばれているチョウ・ドンユィ。いまや、中国の若手の女優のトップを走っていると言ってもいいだろう。そんな彼女が今回演じるのは、いじめ問題を真正面から描く社会派作品のヒロイン、優等生ながら、クラスでいじめに遭ってしまい、苦しむが、シャオベイという、大学を目指す自分とは対極の境遇ながら、孤独な自分の心を理解・共有できる存在に会い、癒され、葛藤する、そんな姿を繊細かつ、力強く演じている。その演技は、すでに映画界でも評価され、今回、第15回大阪アジアン映画祭で上映されたタイミングで、すでに第39回香港電影金像獎で主演女優にノミネートされている。さもありなん。
そんな、中国では大注目の女優作品も、日本では、『シチリアの恋』以降に、限定上映ではなく、普通に日本配給されているのは、『恋するシェフの最強レシピ』ぐらいで、映画祭で限定公開されたら、ラッキーぐらいの状況である。もう少し、日本の配給会社の方、頑張ってくれまいか。
【最近のチョウ・ドンユィ(周冬雨)出演作品】
2018『那些女人』Goddesses in the Flames of War 日本未公開
2018『カイジ 動物世界』Animal World 『2018東京・中国映画週間』上映後「未体験ゾーンの映画たち2019」で上映
2018『僕らの先にある道』Us And Them Netflixで配信
2017『奇門遁甲』The Thousand Faces of Dunjia 電影2018でのみ上映
2017『指甲刀人魔』A Nail Clipper Romance 日本未公開
2017『恋するシェフの最強レシピ』This Is Not What I Expected 日本公開
2016年 『七月と安生』SOUL MATE 大阪アジアン映画祭でのみ上映
2016年 『シチリアの恋』Never Said Goodbye 日本公開
深刻化するいじめ問題を扱う
そんな、大人気女優 チョウ・ドンユィ をキャスティングしているにもかかわらず、物語は、中国国内で深刻な社会問題になっている「いじめ問題」を正面に据えた、社会派ストーリーとなっている。ただ、単なる悲劇を描くのではなく、思春期の主人公の揺れ動く心のありようを繊細に描き、また、境遇の異なる少年と重ねることで見える、格差社会や普遍的な孤独感などを、ふらっと描いているところは、デレク・ツァン節というところか。防犯カメラの存在
犯罪に手を染める少年が、防犯カメラから顔を隠して、街をあるいているのだが、物語が進むにつれて、変化していく。いじめがエスカレートし、物語は、重く、悲劇へと向かっていくが、カメラに映る少年は、徐々に前向きな姿へと変わる。これは、彼女と出会うことで、救われていく彼の心の在り様を表現している象徴的なシーンとして織り込まれているのだろう。作品全体として
トーンとしては、全編通して重いのだが、主人公たちの若さ、立ち向かう気丈さが、観客を惹きつけて放さず、最後まで、一気に観ることができる。近年、韓国、中国、タイなどアジア映画界では、ハリウッド的なエンターテイメント作品ではない、この作品のような骨太の社会派作品の良作が生み出されてきている。日本映画界も、負けずに頑張ってもらいたい。おススメ作品。『少年の君』第15回大阪アジアン映画祭作品紹介ページ
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/c03.html
『少年の君』Better Days(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt9586294/
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