『ローマをさまよう』Roam Rome Mein【感想・レビュー】

2020年3月8日日曜日

review 映画祭 大阪アジアン映画祭

t f B! P L

『ローマをさまよう』Roam Rome Mein【感想・レビュー】


第24回 釜山国際映画祭 Asia Star Award受賞
第15回 大阪アジアン映画祭 特別注視部門

スタッフ staff

監督:タニシュター・チャタルジー Tannishtha Chatterjee

出演 Cast

ナワーズッディーン・シッディーキー Nawazuddin Siddiqui:ラージ Raj
タニシュター・チャタルジー Tannishtha Chatterjee:リーナ Reena
ヴァレンティーナ・コルティ Valentina Corti:Veronica
フランチェスコ・アポッローニ Francesco Apolloni
ウルバノ・バルベリーニ Urbano Barberini
イーシャ・タルワール Isha Talwar:Parul

あらすじ

インド人青年ラージは姿を消した妹リーナを捜してローマの街をさまよう。妹を捜し歩く先々で不思議な人々と出会い、現実と非現実が交錯するなか、ラージの知らなかった本当の妹の姿が浮き彫りになっていく。妹への理解がひとつ、またひとつと進むにつれ、家父長制的な考えにとらわれている自分を直視せざるを得なくなったラージは…。(第15回 大阪アジアン映画祭公式HPより抜粋)

反射する物語

この物語は、主人公が妹を探し、知らなかった妹の姿を知るという骨格になっているようにみえるが、本当はそうではなく、妹を探すなかで、出会う人、主人へ投げかけられる言葉、態度、事柄が主人公に跳ね返ってくる反射構造になっている。主人公は、自分が今まで生きてきた倫理観が正しいと信じて行動するが、それがいかに差別的で、普遍的ではないことを痛感する。一方で、主人公は、少しずつ、物語が進むにつれて、それらを認識し、変化していく。それは、監督がこの物語を通じて、インドの方々に伝わって欲しいと願うからであり、そうあるべきだと考えているからだろう。

監督と主演の勇気

おそらく、インド国内には、根強く残っているであろう女性差別の問題を、女性監督と国内でも人気の俳優が演じることは、リスクも高く、勇気が必要がことだろうと思うが、そこに取り組んだことは賞賛されるべきである。また、近年、他にもこの問題に取り組む作品が生み出されていることは、映画の役割が機能しているともいえよう。昨年(2019年)に日本で公開された『あなたの名前を呼べたなら』も、国内に残る女性差別の問題を、恋愛を通して表現し、素晴らしかったことを思い出した。

作品全体として

ボリウッドの歌やダンス満載のエンターテイメント作品も楽しく、素晴らしいが、一方で、本作のようなインディペンデントながら、社会問題に切り込む作品もまた、インド映画の今であり、もっと観たい作品群である。また、この作品で、タニシュター・チャタルジー監督が、釜山国際映画祭でAsia Star Awardを獲得しているが、日本の大手映画メディアは、そこまでリサーチされていなかったのが、残念。芸能ニュース向けの取材をすることでアクセスを集めて、メディアを維持することも大切だが、日本の映画ファンに向けて、世界の素晴らしい作品や映画情報を伝えることは、もっと大切なことだと編集部は考えている。

『ローマをさまよう』第15回大阪アジアン映画祭作品紹介ページ
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/sl04.html

『ローマをさまよう』Roam Rome Mein(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt9399168/

サイト運営

自分の写真
映画情報「Life with movies」編集部公式サイト。最新映画や映画祭、舞台挨拶のほか、編集部による過去映画トピックスをお届けします。 twitterアカウント:@with_movies

QooQ