『アンティークの祝祭』La derniere folie de Claire Darling 【感想・レビュー】

2020年6月6日土曜日

review

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(C)Les Films du Poisson -France 2 Cinema -Uccelli Production -Pictanovo

スタッフ

監督:ジュリー・ベルトゥチェリ Julie Bertuccelli

出演 Cast

カトリーヌ・ドヌーブ Catherine Deneuve:クレール・ダーリング Claire Darling
キアラ・マストロヤンニ  Chiara Mastroianni:マリー・ダーリング Marie Darling
アリス・タグリオーニ Alice Taglioni:若いころのクレール・ダーリング Claire Darling jeune
ロール・カラミー Laure Calamy:マルティーヌ Martine Leroy
サミール・ゲスミ Samir Guesmi:アミール Amir

あらすじ

夏のある朝、クレールの決意は突然だった――。
70年以上におよぶ長い人生。ここのところ意識や記憶がおぼろげになることが増えてきた。「今日が私の最期の日」と確信した彼女は、長年かけて集めてきたからくり人形、仕掛け時計、肖像画など数々のコレクションをガレージセールで処分することにする。見事な品々の大安売りに、庭先はすぐにお客と見物人で賑わいはじめた。
大きな家財から小さな雑貨まで家中を彩り続けたアンティークたちは、いつもクレールの人生と共にあった。それは、彼女の劇的な生きざまの断片であり、切なく悲劇的な記憶を鮮明に蘇らせるものでもあった。一方、疎遠になっていた娘マリーは、母のこの奇妙な行動を友人のマルティーヌから聞きつけ、20年ぶりに帰ってくるが――。(公式HPより)

カトリーヌ・ドヌーブが認知症の夫人を演じたことに注目が集まるが

この作品で、彼女が演じた役柄にどうしても注目が集まるが、この作品の注目はそこだけではない。過去の記憶のフラッシュバックと認知症で混濁する現実の記憶で物語の中心が構成されるなか、その中心にあるのは「時間」と「記憶」。彼女が失ってしまったもの、失いたくないもの、それらが何なのか、と意識しながら物語を追いかけていくと、彼女の演技のその先が見えてくる。

アンティークの意味するもの

この作品が「時間」をテーマにしていることに気づくと、「アンティーク」が作品の中心にあるのかという意味にもたどり着ける。「アンティーク」は、この作品の中では、「変わらない」存在の象徴として登場する。そう考えて作品を観た時、過去のシーンと現在のシーンとの間にある、「同じ」アンティークの意味や、お金に執着しないクレールの姿にも意味があることがわかる。

美術の力

この作品では、まったく同じ建物の過去と現在が描かれているが、それは「美術」により表現されていることが凄い。アンティークは色褪せないものとして登場するが、それ以外のものは、時と共に色褪せていかないといけない。部屋の壁や柱、小道具たちが色褪せたり、元の姿になったりすることで、時間を表現している映像表現は、意識してみるととても面白い。この作品の美術担当に賞賛を。

サーカス

クレールが失ったものが何なのか。作中の印象的なシーンに、街に来ているサーカスのシーンがある。ここで想起される「ハーメルンの笛吹き男」の伝説。なぜ、このシーンが描かれていたのかを考えると、彼女の行動の意味もみえてくる。

作品全体として

カトリーヌ・ドヌーブと愛娘キアラ・マストロヤンニとの共演という、作品とは関係ない部分に左右されることなく作品を観ることで、監督が描こうとした作品の鍵にたどり着き、その時、あらためて、女優カトリーヌ・ドヌーブの演技が表す本当の姿がわかる気がする。しかし、それでも、彼女の演技に惑わされている気もする。そんな作品。

『アンティークの祝祭』公式サイト

『アンティークの祝祭』La derniere folie de Claire Darling(IMDB)

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