第35回 東京国際映画祭 コンペティション部門
第44回 ナント三大陸映画祭 グランプリ
スタッフ staff
監督:ブイ・タック・チュエン Bui Thac Chuyen出演 Cast
レ・コン・ホアン Le Cong Hoang:ズオン Duong
ジュリエット・バオ・ゴック・ゾリン Bao Ngoc Doling:ホウ Hau
フオン・アイン・ザオ Phuong Anh Dao:ニャン Nhan
ゴー・クアン・トゥアン Ngo Quang Tuan:タム Tam
ゴー・ファム・ハイントゥイ Ngo Pham Hanh Thuy:ロアン Loan
あらすじ
ホウと夫との関係は、主人と召使いのようである。ニャンは夫を子どものように扱っている。そしてロアンは、12歳の頃に自分をレイプした男と暮らしている。3人はそれぞれのやり方で相手の男性との関係を保ち、困難を克服しようとするが、それは家父長制社会の中で生きる女性たちの苦難を浮き彫りにする。(第35回東京国際映画祭公式プログラムより抜粋)
(C)2022TIFF |
10月24日(月曜)上映後Q&Aより抜粋
ブイ・タック・チュエン監督(以下、監督)
レ・コン・ホアン(俳優)
ジュリエット・バオ・ゴック・ゾリン(俳優)
フオン・アイン・ザオ(俳優)
ゴー・クアン・トゥアン(俳優)
チャン・ティ・ビック・ゴック(プロデューサー)
聞き手:市山尚三 東京国際映画祭プログラミング・ディレクター(以下、市山)
Q(市山):東京国際映画祭の長い歴史の中で、メインコンペティションに、初めて、ベトナム映画を選出しました。スケールの大きさに感動していて、逆に、東京国際映画祭をプレミアの場に選んでいただけて、感謝しております。監督への質問です。この作品のきっかけ、また、なぜ、この題材を選ばれたのか、を教えてください。
A(監督):この物語は、6年前に出会ったラブストーリーです。カマウに住んでいる女性作家(ベトナム最南端カマウ州出身の著名な作家「グエン・ゴック・トゥ」)の短編小説が気に入りました。短編の中では、ある女性が、とても特異な愛情表現をする物語が描かれていました。ただ、私は、その積極性は、とても素敵だと感じました。女性というのは、愛し出したら止まらないという物語でした。私は、その物語を気に入って、頭から離れず、止めることができなくて、この作品を創ることになりました。
(C)2022TIFF |
Q(一般):エンドロールを拝見すると、2本の短編を1本にされたとわかりました。2本の短編を1本にするアイデアはどのように生まれたのか。また、気をつけられたことや工夫、効果はなんでしょうか?
A(監督):最初は、1本の短編から映画化しようという企画を開始しました。しかし、脚本を書きあげてみると、これでは足りないと考えました。最初は、2人の女性を取り巻く物語を考えていたのですが、3人にした方が良いのではないか。3人になれば、よりしっかりとした作品が出来ると考えました。3人の女性の男性に対する、それぞれの愛の形が、それぞれ特異・特別であって、そのことによって、女性の愛の強さというものを表せると考えたので、2本の短編から1本の作品を創ろうと考えました。
また、2つ目の質問、苦労したことですが、この作品は、脚本を書くのに2年、撮影に5年かかりました。トータルで7年を要して、その間、困難なことが多かったです。今考えても、この作品が完成して、皆様へ観ていただけるとは、想像できないぐらい大変でした。しかし、ご縁があって、このように観ていただけることになりました。私は「愛」は、決して古くならないテーマだと考えています。特に女性の愛情、この作品の中で描いているものは、特別なストーリーを持っていると思います。
炎の意味するところ
この作品の中では、火、そして、炎、が多く登場する。ニャンの夫タムが働いているのは炭焼き小屋で、ここでは炭を作っている。高熱で炭を作るが、燃え上がるわけではない。燻っている。一方で、物語の中盤に、子供を亡くしたタムは、自分達の家を放火して、炎を具現化する。この作品の鍵となる、炎の意味を考えていくと、別のものがみえてくる。女性の愛の形
監督は、特異な女性の愛の形を描きたい、と考えたと説明していましたが、三人三様の愛情表現が描かれている。ただ、それは、必ずしも、直接的なものではなく、内に秘めて、燻り続けている形もある。ホウは、夫がニャンに恋しているのを知っていた上で、関係を持つこと、その愛を略奪する。しかし、結婚後も、夫はニャンへの想いを忘れることができず、嫉妬の炎を燃やしつづけなければならない。ニャンは、子供の喪失を受け止めることができない夫が、自分の家を放火するという奇行を続けるのを止めることもできず、愛しつづける。ロアンは、自分を襲い、刑罰を受け、僧籍へ入った男を愛しつづける。必ずしも燃えるわけでもなく、燻りつづけたり、小さく持ち続けたりする愛の姿と、作中で描かれる火・炎がメタファーというか、リンクしていることが、作品を俯瞰的に観ると、わかってくる。もうひとつのメタファー、水
主人公たちが住んでいるのは、川辺に家で、それぞれの家への行くためには船を使い、ホウの夫は漁師として、長期間、海の上で生活をしている。そして、それらすべてが、川や海で繋がっている。人の生きる道や関係性を水を媒介にして、表現していると感じる。作品全体として
素朴な生活風景ながら、その撮影には、かなりこだわりや工夫がなされていて、多彩にシーンを観ているだけでも満足してしまう。しかしながら、その中で描かれているものは、愛と表現していいのか、女の情念の炎が濃厚に描かれていて、観客側へ響く余韻は深い印象。表層的な愛憎劇にはならない、川の下を揺蕩うような愛情を体感できるような作品です。『輝かしき灰』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP07
『輝かしき灰』Glorious Ashes(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt22179758/
第35回 東京国際映画祭 特集ページ
映画情報「Life with movies」
https://www.lifewithmovies.com/2022/10/35sttiff.html
(Life with movies 編集部:藤井幹也)
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