(C)Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E, Le pacte S.A.S. |
第75回 カンヌ国際映画祭 カンヌプレミア上映
第35回 東京国際映画祭 コンペティション部門
東京グランプリ、最優秀監督賞、最優秀男優賞受賞
スタッフ staff
監督・脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン Rodrigo Sorogoyen出演 Cast
ドゥニ・メノーシェ Denis Menochet:アントワーヌ・ドゥニ Antoine Denisマリーナ・フォイス Marina Fois:オルガ・ドゥニ Olga Denis
ルイス・サエラ Luis Zahera:シャン Xan
ディエゴ・アニド Diego Anido:ローレン Lorenzo
マリー・コロン Marie Colomb:マリー・ドゥニ Marie Denis
あらすじ
スペイン、ガリシア地方の小さな山間の村。自然とともに暮らす生活を求めて移住してきたフランス人の中年夫婦アントワーヌとオルガは、村に人々を呼び戻すために荒廃した空き家の修復を始める。だが、その行動は村の有力者であるふたりの兄弟の反発を招くことになる。夫婦は兄弟たちからさまざまな嫌がらせを受け、それは過激な暴力にまでエスカレートする。(第35回東京国際映画祭公式プログラムより抜粋)
(C)2022TIFF 10月30日撮影 |
10月27日(木曜)上映後Q&Aより抜粋
ルイス・サエラ(俳優)(以下、ルイス)
聞き手:安田佑子(アナウンサー)(以下、司会)
Q(司会):どのような経過で出演が決まったのでしょうか。
A(ルイスさん):私は、作品の舞台となったガリシア地方出身です。私の地元で作品が創られるということで興味を持ちました。
Q(司会):ルイスさんは、ガリシア語とスペイン語のバイリンガルということでしょうか。
A(ルイスさん):スペイン国内は、4か国語が共存しています(カタロニア語、スペイン語、バレンシア語、バスク語)。ガリシア語は、ポルトガルに近いこともあり、影響を受けています。
Q(司会):ガリシア人は、性格が日本人に似ていると、ネットに書いてあるのを読みましたが、いかがでしょうか。朴訥で、心に気持ちを貯めるタイプだと。
A(ルイスさん):よくわかりません。私は、2日前に日本に来たばかりなので。日本は、武道のイメージ。ブルース・リーとか。
Q(司会):悪役の役づくりについては、どのように取り組まれたのでしょうか。
A(ルイスさん):この作品は、暴力的な物語であり、テリトリー、領地の物語でもあります。シャンは、暴力的で、かつ多面的な人物えですが、彼なりの論理を持っています。ただ、フランスから来た移住者の理屈が(彼の理屈を)覆していきますが。(登場人物の)それぞれに理由があり、理屈があります。そして、私は、キャラクター俳優的で、いつも悪役ばかりやっていますよ(笑)
(C)2022TIFF |
Q(編集部質問(会場から)):私も、ガリシア地方と同様に、ローカル(地方)から映画祭に来ています。日本でも、地方は過疎高齢化していますが、スペインはどうのような状況でしょうか。また、劇中では、地方の人々が不寛容に描かれていて、少し不愉快な印象でしたが、(地方を理解する人として)演じる上で、どのような想いで演じられたのでしょうか。
A(ルイスさん):スペインも過疎高齢化していて、地方から人がいなくなっています。近年は、人間が似て来ている、グローバル化していると感じています。撮影場所の近くに住んでいたころ、原始的というか、違う時代を生きているような感じでした。現代は、大きい魚が小さい魚を食べている世界。東京は、ゴジラみたいな街だと感じますが、一方で地方の方にも想いを馳せている。ここに来れば、幸せになると思っている人たちへ(必ずしも、そうではないという意味か)
Q(一般):不気味な役が素晴らしかったです(笑)ドゥニ・メノーシェさんとの共演について、教えてください。お互いに名優の方だと思いますが、事前に会話をされたり、演技に繋げたりしたのでしょうか。
A(ルイスさん):ドゥニ・メノーシェとの共演は初めてです。監督とは3回目です。事前の打ち合わせは行わず、監督の指示に流されたいと考えていました。監督は、脚本も書いていて、監督のアイデアに委ねるのが良いと考えていました。憎しみが大きい役で、2人の人生の見方は異なっています。そのため、事前には接しないようにしていましたし、また、ドゥニ・メノーシェさんは、とても多忙な様子でした。ただ、とても(本来は)感じのいい人なので、撮影に入る前に「狂気」「狂気」(マッドネス)と言い聞かせておられた(笑)
移住者と地元住民との軋轢
この作品は、スペインのガリシア地方の田舎の集落の物語で、その地域へ移住してきた移住者と地元で生まれ育った地元住民との軋轢を、スリラーという形で描いているが、これは先進国には共通する現代の課題を背景に捉えた作品。そういう意味では、日本でも同様のテーマを背景にした作品を製作することはできると考えるが、都市部と地方との感覚のズレみたいなものは、双方を知る製作者でなければ、創ることは難しいだろう。この物語の登場人物である兄弟の気持ちを、都内で生まれた方には理解しがたいだろうから。奪うものと奪われるもの。しかし、残されたものは。
物語の後半、夫を失ったオルガは、兄弟の母に対して、暴力的に接するのではなく、「一人になったら、隣人なので、相談してね」と穏やかに語りかける。地方の小さな村で生きていくのであれば、協力しあうこと、共生することが必要であることを理解しているのと同時に、同じ喪失を抱える(兄弟は収監されるだろうから)存在となったことを理解しているから。(C)Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E, Le pacte S.A.S. |
作品全体として
創られていてもおかしくなかったテーマだが、意外とみかけなかったテーマを中心にした作品で、作品を製作した視点、また、それをスリラーというエンターテイメント作品へ昇華した点が素晴らしい。一方で、この作品はアジアンプレミア上映で、東京国際映画祭時点では、カンヌ国際映画祭でプレミア上映されたもので、既に評価を得ていた作品なので、ワールドプレミア作品と同列で審査されたことには、少し違和感が残ってしまった。ただ、作品としては斬新かつ素晴らしい作品なので、ぜひ日本でも配給されて、多くの方に観て欲しい。『ザ・ビースト』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP03
『ザ・ビースト』The Beasts(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt15006566/
第35回 東京国際映画祭 特集ページ
映画情報「Life with movies」
https://www.lifewithmovies.com/2022/10/35sttiff.html
(Life with movies 編集部:藤井幹也)
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