(C)2022 EPO-FILM,RUTH MADER FILMPRODUKTION |
第35回 東京国際映画祭 ユース部門
スタッフ staff
監督:ルート・マダー Ruth Mader出演 Cast
マリア・ドラグシ Maria Dragus:シスター Sisterレオナ・リンディンガー Leona Lindinger:ザビーネ Sabine
アンナ・エリーザベト・ベルガー Anna Elisabeth Berger:アルモ Armo
ソフィア・ゴメス=シュライバー Sophia Gomez-Schreiber:マルタ Martha
ペトラ・モルゼ Petra Morze:シスターアグネス Sister Agnes
あらすじ
オーストリアの裕福な家庭の子どもたちが集まる、全寮制のカトリック系女学校。校長の尼僧は信仰心が薄れてゆく現状を憂いている。校長のお気に入りの生徒のひとりであるマルタは、校長の期待に応えようとする-。(第35回東京国際映画祭公式プログラムより抜粋)(C)2022TIFF |
10月31日(月曜)上映後Q&Aより抜粋
ルート・マダー監督・脚本(以下、監督)
ヤーコプ・ポホラトコ(プロデューサー)(以下、P)
聞き手:市山尚三 東京国際映画祭プログラミング・ディレクター(以下、市山)
Q(市山):驚くような設定で、かつ物語の展開が読めませんでした。この物語は、実話に基づくものなのでしょうか。
A(監督):物語は、フィクションです。ただ、私自身、寮生活をしていた経験があり、シャワーや食事、運動会等のシーンは、私の経験を元にしています。
Q(市山):時代設定は、いつ頃でしょうか。
A(監督):80年代の設定です。
Q(編集部質問(会場から)):音の使い方、アニメーションパートは、ホラー的な製作されているが、学生生活の部分は、淡々と描かれています。なぜ、そういう演出にしたのでしょうか。
A(監督):ホラー風味のあるスリラーを創りたいと考えていました。一方で、ヨハネの啓示や神の表現などは、リアリティのあるものにして、神は本当にいるのかもしれないと感じられる作品にしたいと考えていました。
Q(一般):この作品の予算はどれくらいでしょうか。また、撮影場所は、どこでしょうか。
A(監督):約320万ユーロです。ロケ地は、学校は私が通っていた学校ですが、今は、もうありません。一部は、スタジオで撮影しました。ラストシーンは、ナミビアです。修道院のシーンは、オーストリアの田舎の修道院でも撮影しました。
Q(一般):出演している子供たちのキャスティングについて、教えてください。オーディションされたのでしょうか、プロの俳優なのでしょうか。
A(監督):一人以外は、素人です。ソフィーだけは、学校で演劇をやっていた経験がありました。
A(P):普通のオーディションとは異なり、かなり広い範囲から選びました。子役をキャスティングする時には、彼らと真摯に向き合うことが大切だと思っています。演技と真面目に向き合ってくれる子役を探しました。
(C)2022TIFF |
Q(一般):この作品はどんどんとテンションが上がっていって、何か悪いことが起きるのではないか。最後は、誰かが死ぬのか、ケンカするのかと思っていましたが、最終的には、何も起きなかったのは、なぜなのでしょうか。
A(監督):結末は静かで心理的で、より死を感じられるものにしたいと考えていました。シスターとサビーナの立場が(役割が)入れ替わるというふうにしました。ラストでは、シスターは、サビーナへ信仰を伝えるのをあきらめることに、最後はサビーナに赦しをこうという物語にしました。
Q(一般):キャラクターのひとり、マルモは複雑なキャラクタだと感じた。彼女は顔を洗うことを拒否したり、誰かに気にされたいと思っているにもかかわらず、体を清めることを拒絶しますが、演出意図はあるのでしょうか。
A(監督):アルモは、一番好きな登場人物。少しミステリーな感じがしますし、心は温かく、ただ孤独で友達が欲しいと思っている、サビーナと友達になりたいと思っています。マルタとも友達になりたいと思っている。体も顔も洗いたくないのですが、子供の中には、そういう子もいる。虐められたり、体を怪我していたりすると、体を洗いたくないというのは、子供の自然な行動かと思います。
Q(一般):カトリックの習慣が背景に描かれている。非キリスト教の人間が観る時、事前に知っておいた方がいい知識があるのかどうか、意識して製作されていないかもしれませんが、彼女たちの生活とキリスト教の暦の流れと関係づけながらみていけばいいのか。
A(監督):特に事前の知識は不要ですよ。私の方から、非カトリックの人がどう思われたのかお聞きしたい。
Qの方(一般):私は、キリスト教系の学校を卒業したので、出てきたシーンが少女の成長と重なっていく、また、最後、聖痕の絵が出たということで新たに生き直すということを作品から感じたのですが、知らないままで観るとホラーの部分だけが強調されるのかな、と思い、質問しました。
A(監督):キリスト教系でない方は?
Q(一般):マルタは、顔を洗いません。悪魔をイメージしたのか?私には、虐待されている子にもみえましたが。
A(監督):サタンと繋げてはいません。ただ、サタンのようなものは、化粧して、引き取りに来る父親=サタンのような存在。
※編集部は、カトリックの教義に詳しくないため、作品の背景など解釈の一部が間違っている可能性があります。もう一度、カトリックの教義について解説付き上映が欲しい。
学校と教義のなかで
裕福な家庭の子供たちが通う寄宿学校が舞台となっていて、その敷地の中では、学校のルール=カトリックの教義という構造になっている。子供たちの自由は制限され、また、教会の教えが絶対的に正しいとされている世界。寄宿学校という、ある意味で社会と隔絶された環境で、正しいかどうかは別として、他者から価値観を強要される世界の怖さが、淡々とした学校生活の中に漂っている。嘘と真実
教会の価値観として、あってはならないことは、なかったことにされる社会。誰も上がってはいけないと言われている上階層。教会の教えを信じているもの、信じないものの、心をのズレ。一方で、友達と仲良くしたい、交流したいという想い。幼少期の不安定な心の在り様と、友達との交流の暖かさ、シスターへの不信が、混ざり合ってく空間の座り心地の悪さ。(C)2022 EPO-FILM,RUTH MADER FILMPRODUKTION |
作品全体として
『セルヴィアム -私は仕える-』』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3507YTT01
『セルヴィアム -私は仕える-』Serviam - I Will Serve(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt21227008/
第35回 東京国際映画祭 特集ページ
映画情報「Life with movies」
https://www.lifewithmovies.com/2022/10/35sttiff.html
(Life with movies 編集部:藤井幹也)
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