第20回大阪アジアン映画祭の魅力を、映画コメンテーター・加藤るみが探る【インタビュー/暉峻創三プログラミングディレクター】カザフスタン映画から特集企画<タイ・シネマ・カレイドスコープ2025>まで<Part.1>

2025年2月26日水曜日

映画祭 大阪アジアン映画祭

 

2025年3月14日(金曜)から3月23日(日曜)まで、優れたアジア映画を紹介する映画祭「第20回大阪アジアン映画祭」が開催されます。

この映画祭は、今年で20回目を迎えますが、全国からアジア映画ファンが集まり、日本国内の映画祭の中でも盛り上がる映画祭として知られています。近年では、その噂を聞きつけてか、首都圏から映画配給会社の方や映画評論家、映画製作者などが来場する姿や、海外の映画祭関係者の姿もみられ、ますます注目度の高い映画祭となりました。

今回は、昨年の同映画祭でMCを担当した、映画コメンテーター・加藤るみさんをインタビュアーに迎え、暉峻創三プログラミング・ディレクターへ、今年の見どころや映画祭の魅力などを深堀する(インタビューする)シリーズ記事のPart.1をお届けします。

インタビューの様子、加藤るみ(左)、暉峻創三プログラミングディレクター(右)

(暉峻)ちょっと僕の方が、加藤さんに何が観たいと思ったかなっていうのを聞きたいと思うのですが(笑)
(加藤)それはもう結構、色々あるんですけど、でもやっぱり『愛の兵士』『「桐島です」』。このオープニング、クロージングの2本は、気になるところがあります。
暉峻)いや、それはすごい嬉しいですね。オープニングのカザフスタンの作品を観たいと言っていただいたのも、めちゃくちゃ嬉しいですね。
加藤)カザフスタンの映画を、私自身があまり観たことがない、ということもありまして。
暉峻)そうなのですね。私自身も、それほど観ているというわけではないのですが、観客の方も、初めて観るという方が多いと思いますし、おそらく、カザフスタンに映画界があったのか、ぐらいの感覚の方も多いと思います。

暉峻) 実は、過去2年間、大阪アジアン映画祭のオープニング作品は、香港映画だったんです。(第18回(2023年)『四十四にして死屍死す』、第19回(2024年)『盗月者』)人気俳優が出演している香港映画を選出してきたのですが、これらの作品を上映すると、お客様が多く足を運んでいただけるのですが、そればかりを続けるのは良くないのではないかと考えました。

 (暉峻) 今回、第20回の節目の年でもあるので、あまり既存の人気に頼った作品を選出するのではなくて、現時点では、ネームバリューは少ないかもしれませんが、むしろそういう作品をオープニングに入れることで、お客様に観てもらいたいと考えました。ただ、実際に、この作品を観てもらえば、作品自体は、めちゃくちゃ面白くて、エンターテインメント作品として、十分楽しめる作品なんです。

加藤)ミュージカルエンターテインメントと記載されていて、「カザフスタンポップ」というのも、とても気になるのですが(笑)
暉峻)メロディも割と哀愁があったりして、日本でも受け入れられるのではないでしょうか。韓国では、すでに、カザフスタンポップのファンの方が多いとお聞きしています。
加藤)そうなんですね。まだ聞き馴染みがないというか、初めて聞いたぐらいです。
暉峻)カザフスタンに『A'Studio』という、超人気グループがあります。何十年っていう活動歴を持つグループで、旧ソ連の頃から活動しているグループ。
加藤)じゃあ、国民的アイドルのような。
暉峻)このグループを知らないと、カザフスタン人じゃないぐらい(笑)、誰もが知ってるし、誰もが聴いたことがあるグループで、中心人物が、日本で例えると、ちょうど小室哲哉的な存在で、作曲やプロデュースを手がけています。アーティストは、今は、中央のこの女性ですね。少し興味深いのは、メンバーが不動なんではなくて、センター以外の他のメンバーは入れ替わりつつ、現在このメンバーになっているという形で活動されているところ。

加藤)ころころ変わってくんですね。じゃあ、この曲はこの人たちみたいな感じで。
暉峻)曲毎というわけではなく、このセンターにいる人と、このグループ自体が超人気の存在で、日本で言えば、そう、AKBグループと同じで、実績を残して、卒業するみたいな、こちらは人数は少ないですけど(笑)面白いのは、センターは、以前は男性だったんですよ。
加藤)そうなんですね。
暉峻)今は、女性の方になったんですけど、最初のセンターの方が売れて、ソロデビューして、抜けて、次の人が入ったりして。それで、今は、この中央の人が歌い手として加わって。ただ、音楽は、常にプロデューサーの彼が創っているので、音楽性は変わらないです。

加藤)なるほど。ありがとうございます。先に、オープニング作品に、触れてしまったんですけど、少し話を戻して、昨年の映画祭について、お聞きしたいんですけが、昨年は、タイ映画にかなりフォーカス当てたプログラムでした。
暉峻)加藤さんは、タイ映画の司会を担当いただいていましたよね。
加藤)そうですね。タイ映画の『親友かよ』

Photo by OAFF

Photo by OAFF

暉峻)あの作品は、国内での配給会社が決まったらしいですね。
加藤)そうなんですね。当日は、本当に、熱気というか、ファンの皆さんのタイ映画愛も伝わりました。作品としても、めちゃくちゃ素晴らしいじゃないですか。そして、その映画を観ることができて、なんか掘り出し物を発見したような、そういう気持ちになりましたね。
暉峻)いや、そう言ってもらえると、嬉しいです。
加藤)暉峻さんの、昨年の映画祭の感想は、いかがでしょうか。
暉峻)そうですね。いや、実際、自分の中で、1番大きかったのは、タイ映画の特集ができた、ということでした。何しろ、大阪アジアン映画祭は、限られた予算で運営している低予算の映画祭なので、新しい特集をするには、それなりの資金や裏づけを探さなければいけない。タイ映画について、少し前の現地報道で知ったのですが、タイ国内の映画館の人気は、2、3年前は、アジアの他の国と同じように、ずっとハリウッド映画の天下だったんところ、近年は急激に、タイ映画の人気が、若い人たちの間でも盛り上がり始めたとか、観客動員が増え始めたと。これは、ちょっとタイ映画も面白くなってきたのではないかなと思って、特集を考えたんです。

また、タイは、政府側も変わりつつあって、以前は、他の多くの国と同様の、政府の役人が色々文化事業的なことも決めるみたいな感じでやっていましたが、どうしても、役人がやるといろいろ的外れなことも起きてしまうのです。タイの政府もそれを反省して、特別にソフトパワー戦略委員会っていう委員会を設置して、そこは役人ではなくて、それぞれの分野の、映画なら映画、音楽なら音楽、そういうスペシャリストを委員として迎え入れ、彼らが公的な予算の使い道を決めることに。その委員会が、大阪アジアのことを評価してくれて、タイ政府側の協賛も得られたことで、特集が実現しました。
加藤)そうなんですね。
暉峻)その時に、『親友かよ』もありましたし、割と面白い映画がいっぱい揃っていました。
加藤『葬儀屋』とかもありましたね。

『葬儀屋』

暉峻)あ、『葬儀屋』も観られましたか。あの作品、ある意味、我々もタイ政府側も、驚いたんです。この作品は、タイのド・ローカルな映画じゃないですか。外国人が観てもわかんないんじゃないかってぐらい、笑いのツボとかも、タイの方しかわからないような映画で、実は、事務局のスタッフが、大阪のタイ総領事館へ行き、事前の打ち合わせをしてたらしいんですけど、その時に、タイの総領事からも、この映画を上映して、日本人が受けるわけがないと、外国では、これは受けないと思いますと。でも、結果的には、私は、その上映会場にはいなかったのですが、会場では、かなり笑いが起きていたと聞いたんです。そのおかげか、なんと、その映画も、日本国内での配給会社が決まったらしいですね。『親友かよ』も配給権が買われましたし。
加藤『フンパヨン 呪物に隠された闇』
暉峻)あの作品は、映画祭前に配給が決まっていましたし、すでに日本で上映もされましたね。そのように、割と成果があったという評価をいただき、特集は、ありがたくも、今年もまた続けることができることになり、昨年同様、委員会からの協賛も得られました。今年のタイ映画特集は、実は、ちょっと去年以上にすごいかもっていうぐらい、色々多様な映画が揃ってるんで、ぜひご覧ください。

加藤)最近、国内からも、大阪アジアン映画祭が注目されてるっていうのを、私は直に感じています。通常、映画祭に上映されたからといって、配給が決まるわけじゃないじゃないですよね。映画祭では紹介されましたが、一般公開はされない、という作品って、やはりあるわけで、それを考えると、(大阪アジアン映画祭で上映されたタイ映画が)こんなに配給が決まってるっていうのは、本当にすごいことなんだろうなって。タイ映画の熱もあると思いますが、インド映画のように、ムーブメントというか、ブームが起き始めている感じかな、と。
暉峻)タイ映画は、じわじわと来てるという印象がありまして。
加藤)そうですね。うん。
暉峻)大阪アジアン映画祭も、タイ映画は、以前から紹介してきていたんですけど、昔はここまでの人気はなかったんですよ。それが、上映した映画が面白いっていうことが、なんとなく、皆さんに伝わっていき、大阪アジアン映画祭は、熱心にリピーターいただける方も多いんですが、タイ映画はいいよと言ってくれて。
加藤)そうですね。私は、GDHの映画が好きなんですよ。
暉峻)いや、それであれば、今年のタイ映画のプログラムは必見です。

(C)2024 GDH 559 CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED 『おばあちゃんと僕の約束』
加藤)ほんとそうなんですよ(笑)『団地少女』『Lahn Mah(原題)』。これ、日本版タイトル決定していますよね。
暉峻)よくご存じですね。今日、発表だったのですが(笑)
加藤)確か『おばあちゃんと僕の約束』
暉峻)その主演のおばあちゃんは、今までは、全然知られてない素人のおばあちゃんだったんですけど、この映画でブレイクしちゃって、今、タイでは大人気らしいです。
加藤)なんか夢がある話というか、いいですね。この『団地少女』もGDHですよね。
暉峻)そうなんですよ。今年は、プログラムの中にGDHの作品は、3本も入っていて、『いばらの楽園』という作品もあります。『親友かよ』を見て、素晴らしいと思った方は、これらは見て、損はないっていう感じです。
(C)2024 GDH 559 CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED 『いばらの楽園』

加藤)暉峻さんの、その中でも、注目作品ありますか。
暉峻)GDHという会社は、タイの映画業界の中では、立ち位置としては、タイではトップの、日本でいうと東宝あたりに当たる会社ですけれども、ただ面白いのが、年間2、3本しか作らない会社なんですよ。1番のメジャー会社なんですけどね。1作品1作品が、すごいクオリティ重視で、シナリオとかにも、時間かけて製作していると思うんです。

だから、そのせいもあって、GDHの作品は、もうGDHの作品っていうだけで、こう、クオリティ保証されてるところもあり、さらに、映画の作風とか個性って、普通は、監督などで決まるんですけど、GDHで面白いのは、監督の個性も出るんですけども、それ以上に、なにかGDHの個性みたいな部分があって、GDHという会社自体が1人の作家のようで。
加藤)そうですね、アート性も高い。
暉峻)そういう部分は、今回のラインナップにも現れていて、パっと仮に会社のクレジットが出なくても、見始めたらこれGDHだろうってわかる。
加藤)なるほど。
暉峻)なので、ちょっとどれが1番っていうのは言いにくいんです。ただ、プログラムの中で、この『団地少女』という作品が最新作で。

(C)2025 GDH 559 CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED 『団地少女』

加藤)そうですね、2025年。
暉峻)その意味もあって、これが、コンペ部門にも入っています。また、最近のGDH特徴として、監督がみんな新人ばかりなんです。
加藤)そうですよね。『親友かよ』の監督も、たしか初監督の方だったと。
暉峻『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』も。普通、どこの国の映画界でも、そういうメジャー会社っていうと、巨匠監督と組みがちだと思うんですけど、そういうことはしてなくて、発掘した新人にばかり、撮らせているというのは、すごい面白いなと。
加藤)確かに面白いですね。
暉峻)今回も、確かにどれも新人監督の作品ばかりなんですよ、3本とも。あと、世間的な評価で言うと、この『おばあちゃんと僕の約束』が高く、アカデミー賞の国際長編映画賞のタイ代表に選出されています。そして、タイは、毎年1本は、タイ代表として送り込んでるんですが、ずっと第1次審査落ちだったんですが、この映画は、最後のショートリスト15本まで残って、タイ映画の歴史としても、初めての快挙となりました。この作品は、まだ観てないですか?。
加藤)まだ観てないですね。だからすごく楽しみで、大阪アジアン映画祭で観たいと思っています。
暉峻)この作品は、とても出来がいいので、楽しみにしてください。

<Part.2へ続く>

第20回大阪アジアン映画祭
会期:2025年3月14日(金曜)から3月23日(日曜)10日間
場所:ABCホール、テアトル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館
公式サイト

https://oaff.jp/

インタビュー:加藤るみ
SKE48を卒業後、映画・釣りなど多趣味を生かしマルチに活躍中。『BRUTUS』映画特集、サンテレビ『正月映画大百科』など、関西を拠点に映画コメンテーターとして精力的に活動。第19回大阪アジアン映画祭から、MCとして参加。

【文・構成・撮影:藤井幹也】
映画情報「Life with movies」 の運営を担当。 年間400本以上の作品を映画館で鑑賞しつつ、国内で開催される映画祭(東京国際映画祭、大阪アジアン映画祭、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、フランス映画祭、イタリア映画祭等)へ参加している。作品配給側の視点ではなく、作品鑑賞側・観客側の視点を持ちつつ、客観性と多様性を持つ映画情報を届けるべく、と日々活動中。活動エリアは、京都を中心に、関西地域ですが、映画祭へ参加のため全国各地を飛び回る日々。
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